【考察】「僕たちがやりました」市橋が死んだ理由は?ドラマと漫画(原作)の最終回(ラスト)の違いは?(ネタバレ注意)
2024.11.09投稿
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2015~2017年に「週刊ヤングマガジン」にて連載された大人気漫画「僕たちがやりました」について、漫画版とドラマ版のあらすじを振り返り、双方の違いを考察します。
そして、「僕たちがやりました」で最も大きな波紋を呼んだシーンである市橋が死んだ理由についても考察していきます。
初版発行日 | 2015年9月4日発売 |
作者 | 原作:金城宗幸、作画:荒木光 |
巻数 | 全9巻(コミックス) |
ジャンル | サスペンス |
Wikipedia | 僕たちがやりましたのWikipedia |
「僕たちがやりました」のあらすじ
主人公のトビオは夢はなくともそれなりに楽しみを持っており、満足したそこそこの人生を過ごしていました。
波風を立てないように生きていましたが、トビオの通っている凡下高から道路を挟んだ場所にはヤンキー学校である矢波高があり、凡下高の生徒は暴力を受けていました。
ある日、トビオの友人であるマルは市橋に拉致され、ボコボコにされた事でトビオは矢波高の連中に仕返しをしようと計画
友人の伊佐美とOBの小坂(パイセン)と共に矢波高に忍び込んで手製の爆弾を仕掛けます。
この爆弾が人命を奪う事態になり、その罪悪感に悩まされるトビオ達…
小さなイタズラ心が生んだ大きな事件はどのような方向へ進んでいくのか!?
あらすじや最終回の解説・考察を行うためネタバレを含む場合がありますので、最初に「僕たちがやりました」を見て頂くことを推奨します。
市橋が死んだ状況を解説
「僕たちがやりました」にはどうしようもないようなキャラクターがたくさん出てきますが、その中でもトップオブクズの称号を与えたいのが矢波高の市橋
そんな市橋が死んだ理由について考察していきたいと思います。
一度目の死亡未遂
市橋が死んだ(死にそうになった)シーンはパイセンが仕掛けた爆弾からガス引火をして爆発を起こした事件に巻き込まれて死ぬ寸前の状態になりました。
漫画内では「市橋は死んだ」とされており、ここで一度死亡フラグが立っています。
結果的には一命を取り留めていましたが、車椅子生活で五体満足で生きていけない状態になっており、血眼でトビオ、伊佐美、マルを探し出そうと動き出しています。
- 車椅子生活での市橋の変遷
- ①車椅子状態ながら矢波高校のトップとして伊佐美、トビオを追いつめる
②体が不自由な事で同級生からバカにされはじめる
③蓮子と共にトビオを探している中で蓮子への恋心を募らせる
④学校の番長(トップ)を狙う有原達に襲われる
二度目の死亡未遂
学校のトップを狙う有原達に襲われる市橋
車椅子で満足に動けない市原は有原にボコられ、なす術がない中で、取り巻き達は蓮子をレイプしようとスタンガンを当てる
蓮子がトイレに連れて行かれそうになる時に市橋は有原が持っているナイフを自らの首に刺し、命を絶つことで蓮子を救おうとします。
しかし、病院に運ばれた市原は生還。命を繋ぎ留めます。
三度目の自殺
再び病院に入院する事になった市橋は蓮子によって看病されて、リハビリを懸命に頑張る
その励ましに心を打たれた市橋は蓮子に告白を行う。
そんな中、後から入院してきたトビオと友人関係になる市橋。
市橋は蓮子に告白した事をトビオに告げるが、蓮子と結ばれたトビオに現実を告げられると友人であるトビオにビデオメッセージを送る。
そこにはトビオと友達になれてよかったこと、自分がこんな体になったことについて他人を恨み絶望したが、結果的には自分が今までやってきたことのしっぺ返しだったこと、この状況になったからこそトビオや蓮子と仲良くなれた事を告げて、最後に「俺、もう終わりにするわ」「蓮子のこと幸せにしろよ」と告げ、病院の屋上から飛び降り自殺をします。
市橋の自殺理由を考察
ずっとクズを通したきた市橋は自らが更生した瞬間に自殺をしてしまいます。
自殺する前にトビオにビデオメッセージを送っているので、自殺に至った要因についてはいくつかの理由が考えられるので考察してみました。
市橋が自殺した理由
①生きる事への不自由さを感じた
②トビオに心をぐちゃぐちゃにされ人格が壊れてしまった
①生きる事への不自由さを感じた
市橋の自殺が起こり、茫然としているトビオに刑事はこう語りかけます。
やっちゃう人の多くは「生きるのが不自由」だと考えている。
心に逃げ場が無くなった、誰ひとり分かち合える人がいなくなった時、人は自殺を選ぶ。
それが衝動的であれ、理性的であれ、彼らにとってはそれが救いで…
(引用元:僕たちがやりました)
市橋は車椅子を使わないと生きていけない状況でも懸命にリハビリをしていた事から単純に体の不自由さを嘆いて自殺したとは考えづらいです。
心境の変化があったとしたら、入院先にトビオがやってきて友達になった後
トビオと市橋は本音で話すようになり、トビオが看護師を狙う事を打ち明けた時、市橋は蓮子を好き出る事を打ち明けます。
しかし、トビオは看護師とデートした後、蓮子と会いそのまま結ばれ、蓮子と結ばれた事を市橋に告白、市橋はこれを受け入れ応援した直ぐ後に自殺している事から、分かち合えると思っていたトビオと分かち合うことが出来なくなって心の逃げ場がなくなった事から現実に絶望し自殺したのではないでしょうか。
ワルだった以前の市橋はこの絶望を暴力によって相手を叩きのめす事で解消していましたが、蓮子やトビオと知り合って更生した分、心や行動の逃げ場がなくなってしまった。
事実、内心じくじたる思いがあったであろう市橋は意見を一変させたトビオに対して応援のメッセージを送っています。
市橋が更生してしまった事が心の逃げ場をなくし、体が動かず、他に逃げる事が出来ない現実により一層絶望を深めてしまった。
そして、自殺という道を選択してしまった。
この考察が私が考える市橋の自殺の理由です。
なのですが、他の可能性についても考えてみます。
②トビオに心をぐちゃぐちゃにされ人格が壊れてしまった
可能性はかなり低いと思いますが、ちょっと捻ってこんな可能性も考えられるかなと思う理由が「トビオに心をぐちゃぐちゃにされ人格が壊れてしまった」という説です。
市橋はずっとトビオが爆破事件の犯人だと信じていました。
その思いは疑いなどではなく確信レベルで100%犯人だと信じていたため、市橋は見つけて殺害しようと考えていました。
しかし、蓮子の思いや人柄に触れる事でその殺意は徐々に薄まり、病院でトビオと再会した後はトビオの人柄にも触れてその殺意はなくなり、むしろ好意に変わっていきました。
憎しみから好意へと変わったトビオに蓮子への恋心を打ち明ける市橋
しかし、市橋は親友レベルの信頼を置いたトビオに再度裏切られる事になります。
憎い→大好き→憎いと思いたいけどどうしようも出来ない、どう思っていいのか分からない
こんな心の揺さぶりをかけられた市橋は体が動かない自分の状況などに目を向ける事になり絶望、自殺に至った…
こんな考察もわずかに残されているのかなぁと思っています。
漫画版「僕たちがやりました」の最終回
最終回のあらすじを解説する上でネタバレを含む場合があります。
本編を読む前に「僕たちがやりました」を読むことをオススメします。
漫画「僕たちがやりました」の最終回
爆破事件の真犯人は自分達だと主張し、ゲリラ活動を行うトビオ達
パイセンを何度も援助した輪島は玲夢にパイセンを拉致・殺害するように命じますが、パイセンは逆に玲夢を殺害してしまいます。
この行為によってパイセンは逮捕されますが、爆破事件については輪島によって揉み消され、トビオ、伊佐美、マルは無罪となります。
そして10年後…
トビオは蓮子と別れて新しい恋人を作り、アイドル事務所で勤務
伊佐美は今宵と結婚し、第二子を授かり、今宵の父の元で勤務
マルは怪しいネットワークビジネスに手を出して大成功
とそれぞれの人生を過ごしていましたが、パイセンが刑期を終えて出所したタイミングで4人は再び集結
それぞれの現状を伝えた後にもう集まらない事を確認しますが、トビオは事件の事が忘れられずに時折死にたくなる衝動が起きるためパイセンに会いに行きます。
パイセンはこれからお笑い芸人として生きる事を宣言したことから、トビオは犯罪者が何を言っているのだと咎めますが「生きているのであればしょうがない」という言葉を吐き出すパイセン
トビオはパイセンと話して時折死にたくなる自分を受け入れた上でどう生きていけばいいのかを考えるようになります。
< ここから最終回となります >
いつも通り女子高生の短いスカートを覗きながら電車で職場に通うトビオ
今宵の父親を交えて子供たちと遊ぶ伊佐美、怪しい水を高値で売るマル、お笑い養成所に通うパイセン
4人がそれぞれ日常を過ごす中で、トビオは恋人の夏っちゃんが通う産婦人科から電話を貰い、男の子が無事に出産した事を聞きます。
喜び勇むトビオは”いつか望んでいたソコソコ”を手に入れたと実感していました。
交差点で信号待ちをしている時に矢波高卒業生で爆破事件によって障害を持っていた人物に出会います。
トビオはしらばっくれて逃げるように立ち去りますが、トビオの後ろで市橋(幻影)が落下します。
市橋は子供が産まれた事を祝福しながらナイフを渡し、トビオに自殺を促しますが、架空のナイフなので自殺は出来ず…
レディースクリニックに到着し、産まれた我が子に触れるトビオはこう思います。
「そこそこ」を生き抜こうと思う
ただそれでも、いつかもし耐えられない日が来たら、その時は死ねばいいだけの話だろ
子供の名前を聞かれたトビオは、パイセンが爆弾のスイッチを押して爆発させるシーンを思い出したところで「僕たちがやりました」は終了となります。
ドラマ版「僕たちがやりました」の最終回
最終回のあらすじを解説するうえでネタバレを含む場合があります。
本編を読む前に「僕たちがやりました」を視聴することをオススメします。
ドラマ「僕たちがやりました」の最終回
自分たちが爆破事件の真犯人だと主張するトビオ達
輪島はそんな主張をするトビオたちを拉致し、西塚と玲夢に殺害を指示しますが、パイセンは逆に玲夢を殺害してしまいます。
罪を償おうと思い行動に出たのに更なる罪を重ねてしまったパイセンに対してトビオは叫びますが、刑事の飯室によって逮捕されてしまいます。
自分たちが自白した事件も揉み消されてしまう中で、どうしても納得がいかないトビオは手製の爆弾を凡下高校に仕掛け、自分たちが犯人であることをアピール。
テレビで生放送されていた事から伊佐美とマルも駆けつけてくる中でアピールを続けるトビオたち…
警察は重い腰を動かせずにいましたが、身代わりとして警察に捕まっていた真中の証言変更もあり、ついにトビオたちは逮捕されます。
蓮子は逮捕される寸前のトビオにキスをしてずっと待っていると告げるのでした。
そして10年後…
パイセンが出所した時期に4人が再会します
トビオは過去の事件から解雇を繰り返しながらもバイトで食い繋ぐ日々
伊佐美は明日男の妹となる女児を授かり、父親として生きる日々
マルはパイセンの金でキャバクラを経営して生きる日々
パイセンはこれからお笑い芸人として生きる事を宣言します。
その後、偶然蓮子と会ったトビオ。
蓮子は他の男性と結婚し、懐妊している事を告げます。
寂しそうな姿を見せるトビオに対して蓮子は「生きててよかった。頑張ったね!」と声をかけます。
トビオが振り返ると市橋(幻影)が立っていました…
市橋は「いい加減楽になれ」とナイフを渡してきましたが、受け取ったトビオは当然自殺する事は出来ず…
一つのイタズラが起こした大事件にトビオは苦しさや心の痛みを感じますが、これからも生きていく・生き続ける事を誓うのでした。
ドラマ版と漫画版の最終回(ラスト)の違い
漫画・ドラマの最終回の違いを解説するうえでネタバレを含む場合があります。
漫画版・ドラマ版の「僕たちがやりました」についてはそれぞれ原作を見たうえで以下の記事を見て頂くことを推奨します。
ドラマ版と漫画版の最終回(ラスト)の違い
漫画版「僕たちがやりました」とドラマ版「僕たちがやりました」の最終回(ラスト)についての違いは以下の通りです。
ドラマ版と漫画版の最終回(ラスト)の違い
①パイセンが逮捕された後のトビオの行動と逮捕の有無
②10年後のトビオの仕事と家庭環境
①パイセンが逮捕された後のトビオの行動と逮捕の有無
漫画ではパイセンが逮捕された後、トビオは警察署で事情聴取された上で輪島の財力によって無実という形で処理されます。
ドラマでも無実という形で処理はされるのですが、トビオが爆弾を持って矢波高校へ爆弾を仕掛けるという行動を起こしており、実際に逮捕されています。
ドラマではよりトビオのパッションの部分をデフォルメした形の演出が加わっており、ドラマティックになった形ですね。
②10年後のトビオの仕事と家庭環境
ドラマではトビオは解雇を繰り返されバイトに明け暮れており、生活レベルの低い状態での日常を過ごしていますが、漫画版でのトビオは正社員としてアイドル事務所で働いており、家では恋人と同棲生活を送っており、生活レベルはかなり高めになっています。
また漫画の最後ではトビオの子供が産まれており、トビオの立ち位置が大きく変わっています。
【ま と め】
ドラマ版と漫画版の「僕たちがやりました」の違いを2つお話しました。
大きく見ると結末・最終回での違いはそれほど多くなく、原作に忠実に描かれているいような印象を受けましたが、ドラマ版の方はトビオを情熱的であり、不幸であるという設定で視聴者にとって感情移入をしやすい状況下で描かれていたように思えました。
どちらのエンディングも良かったですし、これらの経緯を見たうえで「僕たちがやりました」という作品を見てみると改めて味わい深さが出てきますので、本編の漫画・ドラマも見て下さいね。